ストライプ社のエシカルブランディングの裏側―本来あるべき情報はどこに?

 

ストライプ社のエシカルブランディングの裏側―本来あるべき情報はどこに?

3月6日、ストライプインターナショナル石川社長がセクハラ疑惑報道を受け辞任した。

ストライプインターナショナルは「earth music&ecology(アースミュージック&エコロジー)」「koe(コエ)」などのアパレルブランドやECデパートメントストア「STRIPE DEPARTMENT」、定額で服が借りられる「MECHAKARI」などを展開している。特に「earth music&ecology」はモデルに広瀬すずを起用し若い女性に人気だ。ブランドメッセージは「エシカル(倫理的)」であり、CMや店頭で積極的な発信を行っている。また、同社長は男女共同参画会議の議員も務め、女性が働きやすい職場をアピールしてきた。エシカルで人にも地球にも優しいイメージの会社で起きた不祥事は、同社ブランドを支持してきたファンに少なからず衝撃を与えたものと考えられる。

不祥事の報道についてはこちらを

https://www.asahi.com/articles/ASN366631N36ULFA03P.html

しかし、ESG専門家やエシカルファッション専門家の間では、同社は、「エシカル」や「エコロジー」を前面に押し出す一方で、その具体的内容や情報開示については限定的であることは指摘されていた。

例えばESGの S(Social)社会課題に関するフェアサプライチェーンの取り組みを見てみる。同社は人権に配慮した取引先との取り組みを行っているとする一方で、具体的な対象ブランド、対象国、工場詳細、実施結果、改善状況などの開示はなく、企業全体としての目標数、進捗状況、達成度合いなどを判断することができない。同社HPでは『フェアサプライチェーンでつくるブランド「KOE」』としてコエの一部商品で採用されている事が伺えるものの、他のブランドでの情報開示なく、海外のサプライチェーンにおける対応なども把握することができない (https://www.stripe-intl.com/csr/category_detail26.html

E(Environment)環境についても同様である。オーガニックコットン商品の取扱いについて記載はあるが、具体的な内容や数字は公表されていない。ごみ削減やエネルギー使用についても部分的なスナップショットのみで目標値や進捗状況について体系的に開示されていない。

世界に目を向ければ、主要アパレルブランドは社会的責任として、サプライチェーン情報開示に積極的に取り組んでいる。2013年にイギリスで発足した非営利組織のFashion Revolutionの調査によれば、グローバルな主要ファッションブランド200のうち、1次サプライヤーの情報を開示しているブランド企業数は、2017年は32社から2019年は70社にまで増加している。エシカルやエコロジーをうたう同社であれば、当然開示すべき情報であろう。

同社は昨年、朝日広告賞「広告主参加の部」においてearth music&ecologyの広告がグランプリを受賞したが、広告のうたい文句を支える取り組みの情報開示は、上述のとおりほとんどない。

企業がどのようなESG情報を開示しているのかを細かく見ていくと、ESGやSDGsへの取り組みがPRだけなのか実態を伴うものなのかがおおよそ把握できる。エシカルやエコロジーといくらうたっていても、フェアサプライチェーンの実態や目標、進捗はほとんど開示されていないことから、PRの域を出ていないと判断もできる。

ESG情報は一部の専門家だけでなく、消費者も十分に利用可能なので、ぜひ見てみてほしい。実際にどのようにエシカルでエコロジーなのかはESG情報からある程度は把握可能である。好きなブランドであれば、情報開示を要請するのも良い。本来、ブランドとは消費者とともに作り上げるものである。


さらに、同社においては、この不祥事を機に本気でエシカルやエコロジーに取り組み、「earthは、できると信じて動きます。」と信じているファンの期待に、今度こそ真摯に向き合ってほしい。

第67回 朝日広告賞「広告主参加の部」グランプリ

<受賞作品 テキスト全文>

服という商品は。

服という商品は、あなたを幸せにしているか?

服という商品は、誰かを不幸せにしていないか?

服という商品は、人の権利を大切にしているか?

服という商品は、動物の生を大切にしているか?

服という商品は、資源をムダにしていないか?

服という商品は、人々の多様性を見ているか?

服という商品は、働きがいを生み出しているか?

服という商品は、地域を元気にしているか?

服という商品は、世界の貧困とどう関わるか?

服という商品は、テクノロジーとどう組むか?

服という商品は、どこへ向かっていけるのか?

服という商品は、世界をよりよくできるのか?

20年目のearthは、できると信じて動きます。

earth music&ecology


 
ai aonumaethical, Fashion