AIと組織の未来

FutureTopics分科会、記念すべき第1回の講師は鹿内学さん。大学院で博士号を取得された後、10年近く複数の大学や研究機関で認知神経科学研究に没頭され、ビジネス界へと転身された方。ビジネスと学術を股にかけた活躍をされています。鹿内さんからは、心理学から人工知能(AI)に至るまで、様々な領域の学術研究動向についてお話を伺うことができました。

鹿内さんのお話の中で、一つの大きなトピックだったのが「群衆の知恵」「集団的知性」の活用についてです。これらは鹿内さん自身も実際にビジネスの現場で、今まさに活用に取り組まれているトピックでもあるとのこと。その意味するとこは、簡単に言えば「一般の人々の意見を上手に集約することによって、一人の専門家の意見よりもはるかに正確な予測が得られる」ということのようです(※あくまで一受講生による即席の解釈ですので、正確性に欠ける可能性が十分に考えられます)。

そして意見の集約方法に関しては、単純に全員の意見の「平均」を取るという方法よりも、より優れた意見集約の仕組みがあることが学術研究において分かってきているそうです。例えば、集団全体を少人数のサブグループに分け、サブグループごとに一旦相談した後に、サブグループ毎の意見を集約した方が、より良い予測が得られたという研究成果も発表されているそうです。こうした研究成果は、企業などの組織の作り方や在り方に大きな示唆を与えてくれるものと思います。加えて興味深かったのは、同じような意見を持つ人の場合は、複数集めても一人の意見と実質的に変わらない場合があるそうです。多様な意見を持つ人の意見を集約することが重要だという点は、組織の多様性(ダイバーシティ)が持つ意味を考える上でも重要なヒントになりそうです。

さらにAI活用との関係では、意見を集約する役割をAIが担うというアイデアが出てきているそうです。それはすなわち、個々の作業は複数の人間が各々実施し、マネージメント(意見集約)をAIが担当するという役割分担であり、一般的に多くの人がイメージするAI活用の将来像(個々の作業においてAIを活用する一方で、マネージメントの部分は人間の重要な仕事として残り続ける)とはある意味真逆で、非常に興味深く感じました。

鹿内さんのお話は非常に内容が濃く、あっという間の2時間でした。限られた時間では、詳細までを十分に伺うことができなかったため、またぜひ登壇していただきたいとひそかに思っています。改めてお話を伺ってみたいと強く感じた分科会でした。

THai aonuma