Centre for Sustainable Fashion教育部長に聞く!Fashion Valuesとこれからのファッション

今冬より一般社団法人鎌倉サステナビリティ研究所(KSI)は、イギリス・ロンドン芸術大学のCentre for Sustainable Fashion(CSF)が主催するサステナブルファッションに関する教育プログラム「Fashion Values(ファッション・バリュー)」の日本支部として活動を開始します。

Fashion Valuesは、CSFがKeringやIBM、Vogue Businessと共同で開発した、無料でアクセスできるサステナビリティに関する教育プログラムです。このプログラムの2022年のテーマは「ファッションと社会との関係」。これまでファッション業界が社会に影響を与えてきたインパクトを紐解きながら、これからのファッションと社会のつながりを考えます。

今回は、Center for Sustainable Fashionの教育部長 ニナ・スティーブンソン(Nina Stevenson)さんにお話を伺いました。


Q.ファッション業界に対して、どのような問題意識がありますか?具体的な課題を教えてください。


サステナブル・ファッション・センターでは、ファッションをシステムとしてとらえ、4つのアジェンダを使って関係性を捉えています。ファッションは、自然、経済、文化、社会と密接に関係しています。
私は、バリューチェーンや分野を超えて、ファッションの実践者がファッションを再構築するための場をつくることに関心があります。
私たちのファッションとの関わり方の大部分を決定する経済優先の支配的なモデルは、人間と自然を犠牲にした搾取構造への責任があります。

ファッションにおける、そしてファッションを通じた社会的不公正が横行しており、このままでは不平等と搾取を永続させることになるでしょう。
人と自然が繁栄するための条件を作り出すために、私たちはどのようにファッションを活用することができるでしょうか?

ファッションを通じて、どのように不公正に立ち向かうことができるのでしょうか?教育者として、私はファッションの効率化や一時的な解決策ではなく、ファッションにおける製品やサービス、システムの再構築に向け、他の人々と協力できることを嬉しく思っています。


Q.Fashion Valuesコンテンツを制作する上で心がけていたことはありますか?

ファッションバリューのオンラインコースは、様々な理由から作られました。

  • 知識の共有とデザイン思考のための共有プラットフォームを通じて、インサイトや経験をシェアできる思想家や実務家、学習者のグローバルなコミュニティを作ること。

  • システムの変化と抜本的なデザインの実践の必要性を前面に押し出した、アクセスしやすい短編の学習体験を提供すること。

  • グローバルな課題に対して多角的な視点を持ち、共同学習とコラボレーションのための条件を整えること。


Q.FVCは、オンラインコースで学んだ事を実際に自分のアイディアを試し、業界をより持続可能未来を想像する場所としてつくられたものですが、応募者のアイディアで圧倒されることや思わぬ気づきがありましたか。

今年の課題は、「ファッションはどのように社会を価値づけることができるのか?」です。
これはいろいろな解釈が生まれるオープンな問いでありながら、グローバルな訴えでもあります。
私たちは、「ファッション・バリュー・チャレンジ」を通じて、人類と地球の健康を追求するために、デザインやビジネス、テクノロジーのスキルを用いて新しい製品やシステム、サービスを探求するような多様な試みを紹介したいと思います。

Fashion Values: Societyのオンラインコースでは、4週間にわたって以下のトピックを扱います。

  • ファッションと社会

  • 社会的正義、権力、変革

  • アクティビズムとファッション

  • 社会的不公正に挑戦するために、ファッション・アクティビズムをどのように活用するのか?


このコースの学習者が、新しい知識と実践をもとに、Fashion Values Challengeへの回答を提案することが、私たちの願いです。その回答は、すでに開発中のプロジェクトかもしれませんし、まったく新しいコンセプトであるかもしれません。学生や卒業生を対象としたものと、プロフェッショナルや企業を対象としたものがあります。これは、教育を受けている間はアイデアがコンセプトの段階にあるということ、一方でスタートアップビジネスでは、コンセプトの証明やすでにプロトタイプがある場合があることを考慮したものです。

Fashion Values Challengeを通して、私は、幅広いソリューションを目の当たりにし、ファッションシステムの様々な部分にいる人々から、彼らのサステナビリティの解釈について学びたいと思っています。


Q.Ninaさんにとって、サステナビリティや社会正義とは何だと思いますか?

私としては、ファッションが社会的不公正に異議を唱え、それを是正するための手段となることを望んでいます。支配的なファッション業界のシステムは、ほんの一部の人に富をもたらすために多くの人を搾取することに対して責任を負っています。人や自然を犠牲にしないファッションビジネスや習慣を生み出す別の方法があるはずです。私たちは、経済成長を超えて繁栄を再定義し、ファッションの中心に正義と幸福を据える必要があります。私たちは、新しい革新的なデザインの実践に変化の兆しを感じており、これらの実践が成功するための場を醸成していきたいと考えています。

Q.最後に、Fashion Values Challengeは世界のファッション業界にどのような影響を与えられていると思いますか。

ファッションバリューを通じて、私たちは教育者、デザイナー、企業、コミュニケーター、技術革新者などのグローバルネットワークを構築し、ファッションの実践を通じて人々や地球の繁栄を実現するというコミットメントを共有しています。
そのためには、ファッションの役割とその価値を見直すために大胆に歩みを進めていかなければなりません。


ファッション業界における教育や実践は、もはやこれまでのビジネスの展開の中で考え方で続けることはできません。私たちは、すべての人々の健康と幸福を育む未来に向けて再構築しなければならないのです。


KSIは、Fashion Valuesの日本支部として、「世界の舞台で活躍したい」「ファッション業界の社会課題を解決したい」と考えるデザイナーやクリエイターのみなさまのアイディアを募集しています。日本のファイナリストに選出された方は、日本支部からの推薦として選考に優位になる他、英語の翻訳サポートや同じ志を持つ仲間との座談会などに参加いただけます。

Fashion Values Challengeを通して、よりよい未来に向け、自由で独創的なアイデアを発表してみませんか?

皆さんのご応募を心よりお待ちしています。

2022年度の日本支部への応募は終了しました。

引き続きイギリス本部への直接応募は2023年1月23日まで可能です。

詳しくは、こちらの公式サイトよりご覧ください。
Fashion Values Challenge 公式サイト(日本語)https://www.kamakurasustainability.com/fashion-values-intro

Fashion Values Challenge 公式サイト(英語)https://fashionvalues.org/challenge-2022/fashion-and-society

※本件に関するご不明点は、白石(office@kamakurasustainability.com)までお問い合わせください。


ライター:小澤茉莉(KSIメンバー)
一般社団法人TSUNAGU理事。東京工業大学環境・社会理工学院修士課程在籍。現在大学院で文化人類学の視点からシルクをテーマに人間・生物・科学技術の関係を研究。一般社団法人TSUNAGUではこれまで藍染めや草木染めを中心に日本の伝統文化に関する講演やワークショップ等を実施。また、ライターとしてウェブメディア「IDEAS FOR GOOD」や紙媒体などで活動している。